相賀君の初公認ラリー参加記
上州オートクラブ&TeamTARGET 鈴木博


 相賀君とはバラギアイスサーキットに毎週走りに来てくれた事が縁で知り合い、昨年のマツダの全日本ラリーのオフィシャルを手伝って貰ってから我々の狙った通りにラリーの泥沼に落ちていってくれた。
昨年11月にサイクルスポーツセンターで行われた非公認のラリー体験会にはエントリーしたことがあったが、サイクルスポーツセンター内のコースをアレンジしたSSラリーもどきだったので、本格的な林道ラリー、それもJAF公認競技への出場は今回が初めての体験だった。

 準備の段階で、現在あるのはノーマルのGDBインプスペックCにロールバーと運転席バケット、アンダーガードのバラギアイスサーキット仕様。
公認ラリー出場に必要なものを11月以降少しずつ揃えてきた。
ラリコン:友人の園田さんが秘蔵していた20年前のRP88を貸して貰い、追加でツイントリップをオークションで安く購入、ラリコンセンサーも親方に値引き交渉してもらって購入。
B級ライセンス:親方に推薦してもらってライセンス取得。
補助灯:オークションで年代物のPIAAを購入し、リレーも20年前のを私の物置から引っ張り出してきて取り付け。
タイヤ:マツダ全日本ラリーの00カーで履いたダート用タイヤを借り、ちょっと山が残りすぎているが、ラリータイヤ限定のラリーなので参加はOK


当日、12時30分に我が家と同じ町内に住む相賀君が迎えに来てくれた。
ラリコンに時計をセットしながらトリップの進むのを確認し、通いなれた足尾町を目指して途中のコンビにに寄りながら移動した。
相賀君はいつもの通り飄々として特別緊張している様子は無く、私もラリー初心者の初々しくドキドキしていた事を懐かしく思い出しながら、いつものオフィシャル手伝いに行くような軽い感じで足尾を目指した。

集合場所の足尾町の銅山観光駐車場に予定通り14時30分に到着。まだ参加車の数は少なく、駐車場にはパラパラと10台程度しか居ない。
マツダの全日本で一緒にオフィシャルやった舛田さんが居たので隣に車を止めさせて貰い、まずはご挨拶。
早速受付へライセンスを持って行く。オフィシャルには見慣れたお仲間がゾロゾロいて「今日のオフィシャル場所はどこ?」などと冗談を言ってくる。
受付を完了し、ゼッケンと駒図を受け取る。駒図を見ると勝負どころは1ST:H峠、F線、H峠(逆走)、2ST:H峠、H峠(逆走)といつもと同じことが分かり、相賀君に説明するも、何だか上の空で何を言われても頭に入っていかないようなので詳しい話はしないことにした。

仕事が忙しくてしばらくラリーに来れなかった山口さんが久しぶりに休みが取れ、話ができたのが楽しかった。他にも仲間が続々と激励(新人いじめ)に来てくれ、好き勝手な事を言っていく。足尾の緑を育てる会の面々にも激励され、初体験の相賀君にはでき過ぎなシュチュエーションで緊張も最高潮の様子。
相賀君がとっても羨ましく見えた。私が始めたての頃なんて、誰〜れも知り合いがおらず、ドラと二人で寂しくスタートして行ったのに。
仲間が居る事の幸せをつくづく感じる。

スタート
足尾の会の美女悠利ちゃんのスタート・フラッグとたくさんの知り合いに見送られてスタート。足尾の沿道では地元の方が手を振ってくれている。
相賀号にはステッカーすら貼ってないので一般車と区別が付かないせいか、みんな恐る恐る手を振っている様子が判る。ゼッケンはボンネットにも必要なのを感じた。

H峠入り口でOD処理を行い、アベレージ走行方法を相賀君に説明する。
相賀君は話した内容は理解したように頷いた。ファイナルが5分前になりベルトを締めてヘルメットを被る。あれっ、インカムが聞こえない!
ゴソゴソ接続を確かめてみたがやっぱりダメ。
「アンプの電源は切っておいた?」と尋ねたら「いいえ」と答える相賀君。
そういえば先週「ぺルターは1ヶ月くらい電池持つよ」と冗談で言ったのを真に受けたようだった。もう何やっても間に合わないから大声で叫ぶことに決め「ノートは怒鳴るからね」と言ってファイナルを見ると20秒前。
「5秒前に出て、アベ30だから」と急いで言うがインカムのバタバタで聞こえてはいるが理解までできていない様子。
アベレージ指示のCPに入るのは今回が初めてで前回のサイクルはTC方式のSSだけだった。5秒前に動き出すがゆっくり過ぎてファイナルが減る。
「もうちょっと上げて、そのまま、そのまま、少し落として」と言っているうちにCPラインとオフィシャルが見える。
どうして良いか分からない様子だったが説明している時間も無いのでそのままCPラインを越えた。ファイナルは偶然+0.2。結果オーライ!
ピーっと笛を吹かれたからか、その場で止まろうとする相賀君に、「早く車つけて!」と叫ぶとエンストしそうになりながら何とかCP車横に止まった。
私もゼッケンを叫ぶのを忘れ、手だけ出すとオフィシャルが18番ね、とカードを渡してくれた。「OK全開!」と叫んでハイアベスタート。
私はカードを受け取った後は何したら良いかマゴマゴしながらラリコンにアベを入れる。57と入れたつもりなんだが、何故か47と入れてしまったらしい。
RP88ってキーボードでなくスイッチを横にスライドさせて入力するタイプのラリコンのため数字を入れるのが大変。スタート時間が1秒ずれていて直すのも、数字がずれなので時間を全て入れなければならない。
ナビランプの傘も振動で落ちてきて文字盤の字が良く見えないのと、使い慣れて居ないのとで入力に時間がかかる。やっぱり古いラリコンは新しいのには敵わないことを実感。
とりあえず入力が終わってラリコンのフラッシングが止まってからノートで現在地を探す。キツイ2のコーナーであたりをつけ、次のコーナーが合っているか確認する。
「ラッキー、ここだ」と一発で現在地を見つけリーディング開始。
ぺルターで外の音が何も聞こえないので声の限りの大声でリーディングする。
余りに声を出しすぎで一瞬「うっ」と熱いものがこみ上げたが「ゴックン」と何とか持ちこたえてリーディングを続ける。
相賀君はノートの2とか1とかには随分手前から反応するが、4、5はビビッターが利いている様子で踏めない。雨でコースが良く見えないのもあってノート読んでも返って逆効果で全く踏めていない。でも安全に走りきれるよう読み上げる事にした。
フロントウインドウに曇り止めを塗る事もレインXを塗る事も気が付かなかったようで、基本的な事から全てを教えないとダメなことは後の祭り。
走りは一生懸命走っているのは分かるが、リズムもヘッタクレも無く、ただ走るのに精一杯の状態。スピードも乗ってないヘアピンでサイドを引いたので、「サイドなんか引くなぁ!」と叫ぶ。こんな状況でサイドなんて使うと返ってミスする原因になる。
もう少し走り慣れてから使わせる作戦。
実際相賀君はジムカーナの練習会や走行会で走っていたのでサイドターンはとっても上手。ゴールが近くなってきたのでラリコン見てみると「あれ、-1.0?」「乗っちゃうジャン、補正必要かぁ?」なんてファイナル見ながらリーディングもやればできるもんだ。
そんな事考えていたらゴールCP。
ファイナルは−1.1。
CPの小林さんに「乗っちゃった」などと恐ろしい嘘をついてしまいました。

 

 いきなり初めての林道SSが細尾峠の10Km通しじゃぁ厳しかったか相賀君は肩で息していた。私もまだアベの入れ間違いには気づかず、ほんとに乗ったと思って補正をどうしたら良いか悩んでいた。
林道出口で自主パスコンをし、次のF線に向かう。国道に出てから、そういえば最近足尾の近くの国道上にコンビニができたことを思い出し、相賀君に「電池を買って行こう」と話した。無事コンビにに寄って電池購入してたら競技長の小花さんに見つかって「もうリタイアかい?」などと冷やかされてしまった。
自主パスコンはしたが肝心なスタート時間を控えるのを忘れ、たまたま控えてあった距離から時間計算するなど、いつもならやらなくて良い作業を一杯やって時間調整のノーチェック区間終わり地点へ。コンビニに寄っててゼッケンがずれたのをノーチェック終わり地点で修正。ノーチェック区間の意味の説明もしていなかったのを思い出したがゼッケン順を入れ替える事の説明だけで手一杯で説明どころではなかった。

今度はスタート前に受けCPがあって、スタート場所はその先、とのこと。
アベ30の走行でどんどん林道入り口に近づいて行く。林道に入る直前にCPがあってギクシャクしながら−1.2くらいでCPイン。
以前、我々の作ったラリーでここ使ったときはホテルに近いからこんな場所では笛ふけないと随分上の方だったのだが、まだ時間が早いから大丈夫なのか?
ここには山口さんが居て「頑張って」と応援される。そのままスタートラインについてCP処理。入力に時間がかかるが15秒前にやっと完了。
ノートを用意する。ここのノートは相賀君がジャッジしたノートで1回しか走って無いので信頼性が低い。
今度はインカムを使ったいつものリーディングを始めるがノートとコーナーが合わなくなる。何とか復帰しようとノートとコーナーを見比べるが復帰できず、見覚えのあるコーナーと小屋を目印にリーディング復帰したと思ったら頂上でゴールだった。
ここでもファイナルを見ると1.0。さっきも乗れたけどここも乗れるの?と半信半疑で林道を下ってレスコン35分。雨なので外に出て他車と話す事もせず、H峠のアベ計算やってみたらアベ47Kmになっている事に気づきがっかり。
でもF線はホントに乗れてました。それもちょうど良いタイムで入れたので結果オーライという事にした。

CP手前の3度目のアベレージ走行もまだ慣れきれないようで、ギクシャク走っていく。
このハイアベでは車引き上げ職人の久野さんが何と溝に落ちてスタックしているから気をつけるように、という指示がCP手前のドスコイ水野さんからあった。
まさかあの久野さんがと思ったが・・・・ホントだった。
今度のハイアベは相賀君も1本目よりは余裕があるように見える。が、インカムからはハーハーとスグに怪しい荒い吐息が聞こえて来る。
ノートは読んでいるが、やはりきついコーナーを早めに読み上げると手前のゆるいコーナーから様子を探りながら走ってしまいスピードが出ない。
まだまだ林道を見慣れていなくてコーナーの読みができていないのを感じる。それで怖くてスピードが上げられず、コーナーまでに時間があるので何かやって少しでもタイムを短縮しようと焦ってる様子が判る。
「焦るな、ガマン」「焦るな、ガマン」と何度も叫ぶ。何もできないのがもどかしいのも分かるが下手に小細工しても急に直るものでは無い。
大分走って残り1Km切る位の右ヘアピンでノートではDont Cutを読んだが聞こえて居ない様子。右前のタイヤが側溝に落ちてものすごい衝撃が来た。
とりあえず車は進んでいるのでそのまま走り続けたがバーストしたようでバコバコ言い始めた頃にゴールCP。
思わず「Dont Cutって言っただろう!」って怒鳴ってしまったが、相賀君は「ゴメンナサイ、聞こえてたけど・・・」と小さくなっている。
CP先の広場に車を止め、大雨の中タイヤ交換を始める。足回りにダメージの無いことを祈りながら、この先ガスコンだからそこで確認しよう、と2人でずぶ濡れになりながら交換完了。隣には後ゼッケンのブルーバードが煙出しながら入って来た。
ガキゴキと変な音とハンドルの直進がズレたくらいで車は走ったので中継で中村さんに確認してもらうことにして、いろは坂を登る。
サービスパークの中心に見慣れた仲間を発見し、車を止める。
車は相賀君に任せて1STのコントロールシートの集計をやるために正解表を貰いにオフィシャルのところに行く。
正解表はガスコンで配ってくれれば良いのに・・・・
車に戻るとまだ中村さんと相賀君でどうしようか話をしている。
2STのタイヤはどれを使うか悩んでいるようだが、それよりサスペンションにダメージが無いか、2STを続けられるかの確認が先と中村さんにお願いする。
ジャッキでフロントを上げ、タイヤを外して確認をしていた中村さんが大きな声を出した「ダメです、リタイアしてください」と。
中村さんが指す先のアルミ製ロア・アームはポッキリ折れていた。
よくいろは坂を登れたなぁと思うほどの重症だった。

コントロールシートを計算し提出するのと一緒にリタイア届けを書いて相賀君にサイン貰って提出した。

なんとも悔しい結果になってしまったが相賀君には競技の厳しさが身にしみたのでは、と思う。1STの相賀君の減点数252、1位は97でダントツ、2位以下は130位で2位グループでも細尾峠2本で2分くらい遅いことになる、「みんな速いんだなぁ。」
薄ら明るくなる頃までかかって中村さんがロアアームを仮止めして、とりあえず自走で帰れるようにしてくれた。中村さんたちパドックの仲間はずぶ濡れになりながら仮修理をしてくれ、暖かいカレーやうどんを食べさせてくれた。
相賀君はいつもの食欲が出なかったようだった。
またここでも仲間の大切さが身にしみた。

パドック軍団が帰ったあと相賀君と私はゴール会場で朝ごはんを食べ、他にリタイアしたクルーを乗せた山口さんと赤城駅まで送ってKIT経由で帰って来た。
KITでは社長の吉本さんが居たのでロア・アームの話から色々と久しぶりに話すことができた。

相賀君は基本的にジムカーナ屋的な細かい考え方をする人でまだラリー屋の大雑把な考え方に馴染んでいない。変に緻密な部分もあったかと思うとオオボケしている部分もあってフォローが難しい。でも何故か放って置けなくて少しでも助けてあげたくなる不思議な奴だ。今後ラリーで成績を出すには首都高なんか走らずに林道を数多く走る事しかないように思った。それにラリーで頑張るのであれば最低限ショックを競技用に交換し、他の参加車と同じレベルまで車のレベルを上げなければ、腕だけで勝てるほど甘い世界では無いと感じた。
ただし自分のできる範囲で。

さて、次は超ベテランの北爪さんとのはと車ラリーに出られるか・・・なぁ?
ラリーって色々なドラマが沢山あってまだまだ辞められそうに無い。でもいつまで経っても勝てないなぁ・・・・まっ、それが私の実力なんだろう。