観戦ツアーのコンダクター

川又正英

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撮影/報告 坂本広志AJ Sport)

 

「皆さん出発しますよ!」

  太い無骨な声がして、アンテナが目立つ茶色のシビック・シャトルが先頭で動き出す。
元、ジムカーナの全日本チャンピオン川又正英。
茨城で活動している“ラリー&トライアルチーム コスモス”の4代目会長だ。

 川又は18歳で免許取得と同時にダートラに参戦。
6年ほど土に浸かっていたが、ICC(茨城中央サーキット)がジムカーナコースに模様替えしたのにあわせてジムカーナに転向。
7年(?)ほどやって全日本チャンピオンのタイトルを2年連続で獲得。
その後、ラリーにようやく到達。 全日本2輪駆動部門に2年参戦、コンスタントにリザルトを残した。去年は(2002)、アジパシのラリー北海道に参加したが、現在は半ば引退状態ではあるが、経験豊富なドライバーでもある。

 

「何とかラリーを活性化しなければ、そのためには見せる事が大事ですよね。」
 昨年の栃木・茨城シリーズでは、SSを多くの人に見てもらおうと「観戦ツアー」を始めた。

 この観戦ツアーを実施するにあたってギャラリーが安全に観戦できる為に川又率いるチーム・コスモスがこの観戦ツアーを担当した。
ラリーの主催者は、観戦ツアー担当チームに依頼するというのがここのシリーズのシステム。

 観戦ツアーはこれが初めてではなく、埼玉・群馬シリーズではすでに実行している。
スタート場所に集合した観戦希望者は、スタッフの引率でSS会場に行き、安全な場所を何箇所か指定し、思い思いの場所を見つけてここで何回か観戦するというもの。いくつかのHP上で案内をしているので、容易に集合場所に行く事が出来る。

 ラリーの観戦は、慣れないと難しい。
まず、どこを何時ごろ走るのかという情報は関係者にしか分からない。最近は全日本戦だけではなく県戦でもペース・ノートラリーが行われることは珍しくはないので、コースは事前に知る事が出来るのだが、やはり安全の確保という事には、各主催者は神経を使っている。

  そこで生まれたのが、主催者側で安全管理をした上で、多くの人に見てもらおうという事だった。
 昔の話だが、名物コースのSSでは、コーナーの両側には鈴なり状態でギャラリーが陣取っていた。
見る側も選手の走りを楽しむ事が出来たが、走る側にとっても大きな励みになっていた。

 

 この観戦ツアーは、至れり尽くせりのサービスがついている。
集合場所からSS会場に移動してしばらくすると、発電機の音と同時にライトアップされたコーナーが美しく浮き上がってくる。
これは、まだ明るいうちに川又たちがコーナーのイン側に杭を打ちライトアップしたもの。
 これによってギャラリーは、コーナーのアプローチから車が見えなくなるまでドライビングの詳細を見る事が出来るのだ。
 もちろん、照射位置や角度はドライビングに支障をきたす事のない様に配慮されている。この辺りはドライバーでもある川又の細かいノウハウが生きている。

 ギャラリーに対しての注意事項があった後は、「1号車は何時何分に通過します。」「今、1号車がスタートしました。」川又は、無線で確認した競技車の情報を刻々とギャラリーに伝えている。一方ギャラリーは受付の際に配られた各ドライバーの紹介記事に目を通している。
これも、観戦ツアーの主催者が事前に作っておいたものだ。

  競技が始まるまでのラリー談義も川又の経験が裏づけになっているので楽しい。
競技が始まればドライビング評論も、また楽しい。
「今のはドライビング・ミスだね? あそこでサイド・ブレーキは要らないよ。」
「上手いね、今のは理想のラインだよ! あのラインを走らなければタイムは出ないんだよね。」
バラバラで見ていたギャラリーが、いつしか川又の声が聞こえる位置に集まってきた。

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